量子コンピューターの進化がビットコインに影響を与えるという話があるのをご存じでしょうか?
この新技術が仮想通貨に影響を与えるのか、対策が必要なのか?この記事では量子コンピューターがビットコインに与える影響についてまとめました。
量子コンピュータが仮想通貨に与える潜在的な脅威
量子コンピューターは、ショアのアルゴリズムやグローバーのアルゴリズムを通じて、ビットコインをはじめとした仮想通貨の安全性を脅かすと考えられています。公開鍵暗号、通称非対称暗号は、ブロックチェーン技術において重要な役割を果たしています。しかし、量子コンピューターが実用化されると、秘密鍵を推定することが可能になり、仮想通貨の取引の安全性が失われる恐れがあります。
非対称暗号は、秘密鍵と公開鍵をペアで生成します。秘密鍵は秘密にされ、公開鍵は一般公開されます。ブロックチェーンでは、公開鍵はウォレットアドレスとして使用され、秘密鍵はウォレット内の資金へのアクセスに使用されます。つまり従来の演算方法では、公開ウォレットアドレスは秘密鍵から導き出すことができますが、秘密鍵は公開アドレスからは導き出すことができないので安全性が担保されます。
しかし、そこに量子コンピュータが加わると、話は異なってきます。「ショアのアルゴリズム」を使えば、量子コンピュータはブロックチェーン上のあらゆるパブリックウォレットアドレスに関連する秘密鍵を導き出すことが理論上可能となります。これは明らかに、現在のブロックチェーンの存在を脅かすものですが、実際にそのようなシナリオが実現する可能性はとても低いといえます。
例えば128ビットの安全性を持つ暗号アルゴリズムの解読には従来のコンピューターでは2128回の計算が必要とされています。
しかし、量子コンピューターは計算力が飛躍的に向上しており,暗号を破る性能が向上しているため多くの暗号が破られる可能性が指摘されています。そして、その危険性は高いとみる意見も多いです。
量子技術への対策と仮想通貨の未来
量子コンピューターに対して、ブロックチェーン技術も進化しています。
「量子コンピュータ耐性」を持つアルゴリズムは、すでに著名な研究機関による開発が始まっています。また、一般的な種類の暗号化であっても、正しく使用すれば「量子コンピュータ耐性」が達成可能な場合もあります。例えば、256ビット以上のセキュリティを持つAES(Advanced Encryption Standard)暗号は、「量子耐性」があると言われるものです。
量子コンピューターの台頭に対して、様々なネットワーク技術も量子コンピューターに対応したものが必要となるでしょう。
量子コンピューターとブロックチェーンは量子ブロックチェーンとして現在、研究・実用に向けて開発が進んでいます。
2018年、ニュージーランドのヴィクトリア大学ウェリントン校の研究者たちは、量子時代にブロックチェーンデータを保存する量子ブロックチェーンモデルを考案しました。取引データの断片は、短時間しか存在しないエンタングルメント(量子もつれ)された光子に保存されます。しかし、光子が存在しなくなった後も、光子は読み取り可能です。つまり、ある種の「読み取り専用」モードとして永久に保存され、変更はできません。
理論的には、このような技術を使った極めて安全なブロックチェーンが実現できると考えられています。
量子コンピューターの実用化には5-10年と言われています。ブロックチェーン技術が対応できないと、暗号資産そのものが崩壊してしまいますし、量子ブロックチェーン技術が完成すれば暗号資産はより安全に広く使用される技術となるでしょう。